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村沢義久のソーラービジネス最前線 Vol.9 元東京大学特任教授 コンサルタントや、金融での経験を元に、化石燃料に頼らない「燃やさない文明」を提唱。電気自動車の普及と太陽光発電を中心とした低炭素社会の実現に注力。

太陽光発電のエキスパートとして、様々な事業者へのコンサルティングも手がける村沢氏による、"旬な話題"。今回は、「ドイツのFIT制度、その歴史と未来」について。

世界に先駆けたドイツの試行錯誤が改正FIT法施行後の日本を指し示す

「再エネ先進国」ドイツの20年を超える試行錯誤

今年5月に「再生可能エネルギー特別措置法」が改正され、来年4月から日本の固定価格買取制度(FIT)が大きく変わることとなった。

世界の歴史をみると、国家レベルの買取制度としては、ドイツで1991年に施行された電力供給法が最初だ。ただし、この時の価格は「高値固定」ではなかったため、その効果は限定的だった。

その後、2000年4月には、再生可能エネルギー法が施行され、初めて固定価格による買取制度が導入された。さらに、2004年8月には買取価格が約3割引き上げられた結果、太陽光発電の導入が急速に進み、世界の注目を集めることになった。ここまでは順風満帆。しかし、その一方で、FIT賦課金による電力消費者の負担増大という副作用が顕在化した。

ここからドイツは慎重路線に転換する。まず、賦課金抑制対策として、2009年1月に再生可能エネルギー法を改定し、その年に導入された太陽光発電設備容量に応じて、翌年の買取価格の低減率を決定する仕組みを導入した。それでも不十分だったため、2010年7月の改定では、緊急の価格引き下げを実施。2010年7月以降に設置される新規太陽光発電について13%、同年10月以降はさらに3%引き下げられた。

さらに、最新の2012年4月の改正により、2012年4月1日以降の太陽光発電設備に適用する買取価格を20〜29%引き下げた上、毎月下げ続けることになった。その結果、例えば、10kW未満の屋根置き設備の場合、2014年7月までには12.88ユーロセント(現在のレートで約14.5円)/ kWhまで下がっている。このように、先進国ドイツといえども、FITの導入・施行は一本道ではなく、試行錯誤を繰り返している状況だ。

ポストFITへFIPと入札制度。

ドイツは、「FIT以後」も見据えている。特筆すべきは、FITによる累積導入容量の目標を52GWとし、それを超える新規設備は買取対象外としたこと。さらに、FITを活用せず直接市場にプレミアム価格で販売する「市場プレミアム制度」(FIP:Feed-in-Premium)が導入されている。

当初は選択制で、FITとFIPのどちらかを選ぶことができたが、2014年8月以降は500 kW以上の新規発電設備はFIPの適用が義務化され、2017年からは100kW以上の設備は全てFIPが義務化されることが決まっている。

また、2015年からは、入札制度が始まった。目的は、競争原理導入による買取価格の低下だが、実際には価格はあまり下がっていないようだ。日本でも2017年4月以降に、大型案件を対象として入札制度が導入される予定だが、ドイツ同様、実際の買取価格低下にはあまり効果がないとの見方がある。

ドイツのFITは今大きな曲がり角にさしかかっている。ドイツ政府は、太陽光発電設備の年間導入量を2.4〜2.6GW程度と想定しているが、2015年の実際の新規導入量は約1.4GWしかなかった。導入量急低下の主たる理由は、買取価格の低下だが、もう一つ、国内グリッド整備の遅れも原因の一つと言われている。

このような状況から、日本では、ドイツのFITを「失敗」と称する声もあるが、それは違う。むしろ、絶えず修正を加えながら前進し続ける姿勢は日本の良きお手本だ。

何よりも、ドイツ政府の志の高さが際立っている。2014年の再生可能エネルギー法改正法にて、総電力供給量に占める再生可能エネルギーの割合を、2030年に50%、2050年には80%とする見通しが示された。対する日本政府の目標は、2030年に22~24%。まだまだドイツから学ぶべき点は多い。