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村沢義久のソーラービジネス最前線 Vol.4 元東京大学特任教授 コンサルタントや、金融での経験を元に、化石燃料に頼らない「燃やさない文明」を提唱。電気自動車の普及と太陽光発電を中心とした低炭素社会の実現に注力。

太陽光発電のエキスパートとして、さまざまな事業者へのコンサルタントも手がける村沢氏による、"旬な話題"。今回は、「ソーラーシェアリング」について。

ソーラーシェアリングが農業振興のカギになる

2013年3月末に農水省から、農地の「一時転用」に関するガイドラインが示されて、ソーラーシェアリングは広く認知されるようになりました。法的な裏付けができたことで、ソーラーシェアリングが普及する下地ができたと言えるでしょう。

ソーラーシェアリングとは、文字どおり太陽の光をシェアする仕組みのことです。農地にソーラーパネルを設置して、農作物をつくりながら太陽光発電も行おうという発想ですね。私はこのソーラーシェアリングが、日本の農業振興のカギになるのではないかと思っています。

農業では現在、高齢化が大きな問題となっています。ならば後継ぎに任せればよい、と思われるかもしれませんが、次世代の担い手が育っていないのが現状ではないでしょうか。農業一本でやっていくのは大変なことです。若い世代は地元に残って、食べていくことの難しい農家になるよりも、都会に出て仕事を探す方が魅力的に映る場面も多いようです。

しかし、ソーラーシェアリングを取り入れれば、元手はかかりますが、一反あたりでも年間200万円ほどの収入が見込めます。農地が、農産物だけではない、新たな収入源に変化するわけです。太陽光発電で収益を確保した上で農産物でも収益を上げる……この仕組みが普及すれば日本の農業はもっと元気になるし、農業をやりたい、後を継ぎたいという若者も増えていくことでしょう。

やってみるという精神が成功事例をつくっていく

ソーラーシェアリングは始まったばかりなので豊富に実績があるわけではありません。ゆえに、「ソーラーシェアリングをやっても大丈夫ですよ」と根拠を持って言える専門家も少ないのが現状です。そこで私がいま取り組んでいることは、農業委員会などに直接出向いて、「なぜソーラーシェアリングをやった方がいいのか」という根拠について話をしてまわること。どのような業界も新しい試みには慎重になるものです。ただでさえ農業は伝統的な業界ですから、その壁の高さを感じざるを得ないところはあります。

太陽光発電など自然エネルギーの市場には、数年前からさまざまな企業が参入しています。当然、参入当初、彼らの多くは太陽光発電に関連する経験がありません。私がずっと太陽光発電についての事例を見つめてきた結果、成功している企業はたいてい「前例はないけれど、面白そうだからやってみる」という精神を持っていたように思います。自治体や農業関係者の間にも、最初はソーラーシェアリングにアレルギーがあったようですが、今、急速に気運が高まっているところです。

農家のみなさんこそがこの制度の主役です

「農地にソーラーパネルを建てたら、日光が遮断されて、農作物が育たなくなるのではないか?」……農業委員会さんと話をすると、よくこんな質問を受けることがあります。農作物に、土や水、太陽の光といった自然の恵みは重要です。だから、農業委員会の方々の気持ちもよくわかります。しかし、たとえば茶畑で考えてみるとわかりやすいでしょう。茶は他の多くの農産物よりも〝光飽和点〞が低い農産物です。〝光飽和点〞とは、植物の成長に必要な太陽の光の量だと思ってください。茶は他の植物に比べて日陰に強いため、特に玉露や抹茶用の茶葉の栽培には、直射日光を遮ってやる必要があるほどです。つまり、茶作りにとって、太陽の光は、あればあるだけよいというものではないのです。生産物によっては太陽の光の量を調節してあげる必要があり、その分をソーラーパネルにまわせば、ソーラーシェアリングを取り入れる効果は最大に活かされるのです。

TPPにより、海外から今後、値段の安い農業生産物が大量に入ってきます。日本の農産物とは比べ物にならないほど価格は安いですから、そうなると日本の農家はますます危機にさらされることになるのではないかと危惧されています。農家はこれまでよりも生産性を上げるか、価格を下げるか、品質で勝負するしかなくなるわけですが、とてもではありませんが、海外の安い生産物に容易に対抗することはできないでしょう。

農家の後継者問題やTPPへの対抗といった意味だけでも、ソーラーシェアリングはやってみる価値があると思います。さらに、自然エネルギーをどんどんつくっていけるわけですから、一石二鳥ならぬ、一石三鳥、四鳥……といった効果があるのではないかと感じています。農家の方に伝えたいのは、ソーラー発電は決して農業を冒頭しようとするものではないということ。

むしろそれとは反対で、ソーラーシェアリングを取り入れることが、日本の農業振興を促していくのです。農家のみなさんこそがこの新しい仕組みの主人公です。そのことが伝わってほしいと感じています。